山形家庭裁判所米沢支部 事件番号不詳 決定
少年 T(昭和一七・四・二九生)
主文
少年を特別少年院に送致する。
理由
一、罪となるべき事実
少年は
(一) 昭和三十三年八月頃米沢市○町○○番地○杉○雄方において、○川○久所有のハーモニカ(ヤマハバンド)一個(時価五百円相当)を窃取し、
(二) 同三十四年一月七日同市○○町○○番地○原○七方入口において、○須○治所有の自転車(ブリヂストン号)一台(時価二千円相当)を窃取し、
(三) 同月十日同町○○番地○藤○三方玄関から○藤○司所有のスキー一双及びゴムスキー靴一足(時価合計二千六百円相当)を窃取し、
(四) 同年四月一日同市○町○○番地○杉○雄方において、○木○夫所有のギター一個(二千五百円相当)を窃取し、
(五) 同月十日同町○○番地○月○馬方において、○井○男所有の現金二万七千円外数点在中の黒皮二つ折財布一個を窃取し、
(六) 同三十三年十二月二日頃同市○○町○○番地○野○子方において、同女に対し「お宅の○司君に三百円貸したところ月末に払うというので貰いに来た」旨虚偽の事実を申し向けて同女をして同女の義弟○司が少年より三百円借受けた旨誤信させ、よつて即時同所において同女から三百円の交付を受けてこれを騙取し、
(七) 同月七日頃同市○町○○番地○原○代方において、同女に対し「お宅の○原君に山形で五百円貸したが米沢でお母さんから貰つてくれといわれた」旨虚偽の事実を申し向けて同女をして同女の長男Hが少年より五百円借受けた旨誤信させ、よつて即時同所において同女から五百円の交付を受けてこれを騙取し、
(八) 同月十二日頃同市大字○○○○番地○藤○方において、同人に対し「お宅のK君に五百円貸したが家から貰つてくれといわれた」旨虚偽の事実を申し向けて同人をして同人の三男Kが少年より五百円借り受けた旨誤信させ、よつて即時同所において同人から五百円の交付を受けてこれを騙取し、
(九) 中学校に入学後はたえず頭痛や喉の部分に痰のつまるような不快さに悩まされていたところ、昭和三十四年一月二十六日午後六時頃観映に赴く途中、米沢市○町○○番地○山○一方附近にさしかかつた際突嗟に火を点ずれば日頃悩まされている頭痛が癒るのではないかとの漠然たる期待を念頭に浮ばせ右○山方家屋台所に雪窓が設けられてあるのを認めて右雪窓(○山○一所有)に点火してこれを焼失させることを企て右雪窓を焼燬するにおいては直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家に延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら同時刻頃右雪窓の障子紙の部分に所携のマッチで点火して火を放ち、よつて右雪窓の一部を焼燬し、もつて公共の危険を生じさせ、
(十) 同年二月頃祖父○馬に伴われて上京中、とある店頭で閲覧せる「怪奇読物」なる雑誌に掲載の消えては点るマッチ挿絵に不思議を覚え同年三月初旬頃友人○倉○昭の兄○之○に黄燐マッチの性質を聞かされるに及んで早速黄燐マッチを数箱買求めいろいろな所へ擦つてみては興を覚えていたが、たまたま同年四月六日午後九時頃黄燐マッチをポケットにしのばせて通行中擦るだけでなく、点火させてみるのも一興と考え、米沢市○○町○○番地○田○八○方家屋東側軒下の箱の上に花むしろが数枚積み重ねてあるを認めて右花むしろ数枚(○田○八○所有)を焼失させることを企て右花むしろ数枚を焼燬するにおいては、直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家に延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら、同時刻頃右花むしろ数枚の端の部分に所携の黄燐マッチで点火して、火を放ち右花むしろ数枚の一部を焼燬し、もつて公共の危険を生じさせ、
(十一) 同月七日午後十時頃○倉○昭方より帰宅の途次障子戸に火を点ずれば頭痛による不快さが拭い去られるのではないかと考え、おりからその前を通行せる米沢市○○町○○番地○藤○方家屋の表入口に障子戸が設けられてあることを認めて、右障子戸(○藤○所有)を焼失させることを企て右障子戸を焼燬するにおいては直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家は延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら、同時刻頃右障子戸の障子紙の部分に所携の黄燐マッチで点火して火を放ち、右障子戸の一部を焼燬し、もつて公共の危険を生じさせ、
(十二) 同月八日引続く点火の所為が予期したほどの騒ぎを惹起したように見受けられないところから三度点火させるもさして意に介することなしと考え、同日午後十時頃観映よりの帰宅の途次米沢市○○町○○番地○地○雄方家屋玄関脇に障子戸が設けられてあるを認めて右障子戸(○地○雄所有)を焼失させることを企て右障子戸を焼燬するにおいては直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家に延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら同時刻頃右玄関東側に設けられた障子戸の障子紙の部分に所携の黄燐マッチで点火して火を放ち右障子戸の一部を焼燬しもつて公共の危険を生じさせ、
(十三) 同月十二日午後十時頃○倉○昭方よりの帰宅の途次同市○○町○○番地○藤○吉方家屋六畳間に障子戸が設けられてあるを認め、これまでのあい続く不審火の犯人がいまだ少年なるを世人の覚知していないところから、またもや障子戸(○藤○吉所有)を焼失させるも発覚することなしと考え右障子戸を焼燬するにおいては直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家に延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら同時刻頃右障子戸の障子紙の部分に所携の黄燐マッチで点火して火を放ち、右障子戸の一部を焼燬し、もつて公共の危険を生じさせ、
(十四) 更に同時刻頃同番地○橋○定家屋表出入口ガラス戸が設けられてあるを認めて、右ガラス戸(○橋○定所有)を焼失させることを企て右ガラス戸を焼燬するにおいては、直ちに右家屋に引火し、次いで近接する隣家に延焼して大事に立ち至る虞れのあることを認識しながら、同時刻頃右ガラス戸に貼付せるボール紙の部分に所携の黄燐マッチで点火して火を放ち、右ガラス戸の一部を焼燬し、もつて公共の危険を生じさせ、
(十五) 同月十五日午後十時二十五分頃同市○○文房具店よりの帰宅の途次、同市○町○○番地○形○雄方家屋の出入口奥が障子戸であるを認めて右家屋を焼燬することを企て、右障子戸の障子紙の部分に所携の黄燐マッチで点火して火を放つたがたまたま家人に発見された為、右障子戸の一部等を焼燬させたに止まり、現に人の住居の使用し人の現在する右家屋(○木○所有)を焼燬する目的を遂げなかつ
たものである。
二、適条
前所為中
(一)乃至(五)の各所為は刑法第二百三十五条
(六)乃至(八)の各所為は刑法第二百四十六条第一項
(九)乃至(十四)の各所為は刑法第百十条第一項
(十五)の所為は刑法第百八条第百十二条
に各該当する。
三、保護処分に付する事由
本件の非行、罪質、少年の性格及び非行の反覆習癖の傾向あることに鑑み、少年を特別少年院に送致するを相当と認め少年法第二十四条第一項第三号により主文のとおり決定する。
(裁判官 長沢啓太郎)
〔編注―本件は、少年法第五五条により移送された事件である。〕